日本振興銀行事件 木村元会長告発へ 



預金保険機構は、昨年9月に経営破綻した日本振興銀行の木村
剛元会長(銀行法違反罪で起訴済)を特別背任罪で今月中にも
告発する方向で検討している。振興銀の絶対権力者だった木村
元会長ら当時の幹部は昨年7月、同行に対する金融庁検査の前
後に、業務に関する電子メールを意図的に削除し検査を妨害し
たとして、銀行法違反(検査忌避)の疑いで逮捕された。木村
元会長はその後、起訴され、昨年12月8日に保釈されている。

預金保険機構は振興銀の金融整理管財人を務めており、旧経営
陣の責任を追及する立場にあり、告発により、旧経営陣に対す
る民事、刑事両面の責任追及を進め、破綻にいたる経営の「闇」
を解明することとなる。


一方、金融庁は振興銀に対する「行政対応等検証委員会」を設
置。銀行免許の認可から経営破綻にいたる経緯と、その責任の
所在について報告書にまとめる準備に入っている。ペイオフが
発動された振興銀では、預金者に対し元本1000万円とその
利子を超える部分の一部カットが行われたが、そのカットの割
合は概算払い段階ながら75%に達する非常に厳しい内容であ
った。行政対応等検証委員会の設置は、振興銀の発足から破綻
にいたる経緯を検証するとともに、その刑事、民事両面にわた
る経営責任を問う布石であろう。

また、預金保険機構の告発を受け、木村元会長が主導して構築
した振興銀の親密企業集団「中小企業振興ネットワーク」につ
いてもメスが入れられる可能性がある。約120社からなる同
ネットワーク向けの貸し付けは振興銀全体の過半数に達し、
メンバー企業間の資金・資本の流れは錯綜を極めた。振興銀を
機関銀行とする巨大な持ち合い構造になっており、大口信用供
与規制を逃れるための迂回融資が強く疑われている。同時に、
振興銀と大口融資先との間には、出資法違反の疑いのある取引
や、旧経営陣と関係が深い企業との不適切な取引も含まれてい
たという。振興銀行経営陣だけではなく、融資先企業の経営者
への追及も本格化しそうな情勢である。