インサイダー取引規制20年 「課徴金」という武器


証券取引等監視委員会、市場分析審査課。各地の財務局
などを含め年間600〜900件の“疑惑”を審査する
情報専門部隊である。ここで得られたインサイダー取引情
報は、悪質性や取引規模などに応じてペナルティーを科す
課徴金・開示検査課と、検察庁などに告発を行う特別調査
課に割り振られる。

平成21年度のインサイダー取引審査は649件。課徴
金納付命令勧告は38件、告発は7件で、特に課徴金勧告
は前年度の倍以上となり過去最高を更新した。

課徴金制度が導入されたのは平成17年4月である。告発
までは必要ないが、それでも何らかのペナルティーが必要
とされる比較的小ぶりなインサイダー取引を抑止するため
に設けられた。不当利得相当とされる課徴金額は当初、
重要事実公表翌日の株価から購入価格を引き、そこに購入
株数を掛けて算定していたが、20年の金融商品取引法改
正で、従来の2倍程度の課徴金となる見直しが行われた。

「それまでは告発対象となるインサイダー取引以外は、結
果としてまかり通っていた。だが、課徴金の導入で、小型
のインサイダー取引にも迅速に対応でき、告発案件にも労
力を集中できるようになった」とは、監視委幹部の発言で
ある。ただ、勧告が出された場合、「払えば済む」という
ものではない。監視委による発表時に対象者の氏名は伏せ
られるが、対象者が所属する会社側にも調査の協力を求め
るので会社側は必然的に氏名を把握する。その後、対象者
が会社に残れる可能性はほとんど期待できないだろう。
実際、解雇されるケースがほとんどとされ、調査が不発に
終わっても社内で降格人事が行われたケースもあった。
最近、MBOが発表された、イマージュホールディングス
(9947)の南保正義元社長は、取引先企業のインサイ
ダー取引で、会社を追われた。サラリーマンにとっても、
課徴金以上に過酷なペナルティーが待ちかまえているとも
断言できよう。今後も事例が減ることはない。市場の監視
を続けたい。