東京証券取引所の斉藤社長が、MBOを痛烈に批判した。


東京証券取引所の斉藤惇社長は22日の定例会見で、マネ
ジメント・バイ・アウト(MBO、経営陣による自社買収)
が相次いでいることに言及し、株主への説明責任から逃れ
るために上場廃止を選択するのは、投資家への愚弄だと述
べ、不快感を示した。

斉藤社長は、2009年以降、MBOを実施した企業17
社のうち、上場時の時価総額を上回る価格で買い戻したの
は2社のみだと指摘。「(上場時に株式を)高値で株主に
買ってもらって、増資もし、リスクマネーを取り、株が
半値ぐらいに落ち、株主がうるさくて事業ができないので
上場廃止すると(いうのは)、心情的には、非常に不快だ。
投資家を愚弄していると思う」と発言。この上で「資本
金融のシステムそのものの質、信頼性を非常に毀損する」
と述べた。 

ただ、MBOは経営者による合法的な行為のため、斉藤
社長は「(MBOそのものは)否定できない」とした。ただ
「そこ(MBO決議)にいたるまでの投資家への説明や、
手続き上に不正がないか。MBOのプライシングに不正が
ないかは、当然チェックしないといけない」と述べた。 

MBOのきっかけとして、東京市場における上場維持コス
トの高さを指摘する企業も多いが、この点については
「我々がそれを改善したら(上場廃止が)少なくなるなら、
考慮する。まず、調査したい」とし、上場企業などに実態
の聞き取り調査を進める意向を示した。 

斉藤社長は、銀行から融資を受ければ経営に対する厳しい
指摘もあり経営者も説明するだろうとし、元金も全額を
銀行に返済する必要があると指摘した上で「エクイティ
(株式発行)では、投資家の元本は保証されていない。
相当のリスクをもって投資してもらっている。その資金を
使って事業をしているのだから、いかに面倒でも説明する
のは当たり前だ」と、重ねて苦言を呈した。 

2月8日の本稿でも指摘したが、最近6年間で70社が
MBOにより非公開化している。本年に入ってから6件、
立て続けにMBOは発表された。このままの趨勢が続く
と、東証自体が空洞化してしまうことを懸念した発言と
考えれるが、新興市場の低迷を見ても、官僚的で柔軟性に
欠ける東証の官僚体質が生んだ現象と考え、抜本的改革に
着手すべきと指摘したい。