みずほ銀行

「人的エラー」が重なり、システム障害長引く



みずほ銀行のシステム障害が発生してから1週間が経過した。
新たに振り込みの未入金が判明し、当初23日としていた全面
復旧は更に遅れる可能性が出てきた。60万件を超す給与振り
込みが滞るなど、経済に与えた影響は大きい。発端は東日本大
震災の義援金の大量受け付けとされるが、これほどの大混乱に
つながったのは、「人的エラー」の重なりがあったと、西堀
頭取も認めている。


●38万件の処理できず

「大変だ。夜間の振り込み作業が未了になっている」。西堀頭
取がシステム障害の一報を受けたのは15日早朝。その時すでに
38万件、4900億円もの振り込み作業が滞り、企業の
資金決済などができなくなっていた。

復旧を急ぐとともに慌てて原因究明を始めたが、一因に浮かん
だのは東日本大震災の「義援金」。行政機関やメディア、人気
タレントらが募る義援金の作業を大量に請け負っていた、複数
支店に、想定の約3倍以上の振り込みが一気に集まったとのこ
とであった。容量を超えて資金が振り込まれるのは珍しいことで
はなく、システム障害は、容量オーバーで一時的に止めた振り
込み作業の「エラー」を解除する際に発生したとみられる。エ
ラー解除の作業が滞ったことで、システム全体に負荷がかかり、
商業銀行の生命線である「夜間バッチ処理」のシステムまで動か
なくってしまった。

給与振り込みなど、あらゆる決済業務を夜間に集中処理する
「バッチ処理」は1日、数百万件に達することもある。障害
が起きた15日は「ゴトウ日」と呼ばれ企業間決済が多く、
送金できなかった38万件の多くは企業の代金支払いだった。


●業務続行の判断が裏目にでた

「15日に店舗業務を止めてシステム復旧に注力すれば、混乱
はここまで広がらなかった」と、みずほ銀行首脳は悔やんだ。
システム障害発生後もATMや店舗業務など日中業務を続け、
並行してバッチ処理を進めようとした結果、システムの負荷が
増大して、午前9時には窓口のオンラインが止まり、店頭で振り
込み作業できなくなった。その後は雪だるま式にトラブルが膨ら
んでいった。16日に未送金に終わった作業が44万件に拡大。
窓口とATMを稼働させたため、システムの負荷が増して全国の
ATMまでストップした。同時並行ですべての障害を解消しよう
とした結果、さらに新たな障害を招く負の連鎖となった。相次ぐ
判断ミスに西堀頭取も「見込みが甘かった」と漏らしている。
週末の18日には62万件の給与振り込みが送金できず、混乱は
ピークに達した。ようやくデータ処理が本格的に進み始めたのは
3連休に入った19日だった。


●合併時のシステム障害

金融機関の合併や統合に際しオンラインシステムを一本化する
と、オンラインを統合された側は各種事務を統合した側に合わせ
なければならないため、合併する旧銀行の勢力の大小関係にかか
わらず『オンラインシステムが存続する銀行が当面の経営主導権
を取る』と解されることが多い。みずほ銀行が誕生する際にも
システム統合を検討したが、合併まで時間的・費用的余裕が無か
ったことに加え、同種の不安から各銀行の経営陣が自行のシステ
ムに一本化させようと水面下で激しく綱引きが行われたが結局シ
ステムを一本化することなく、各行のシステムを新たに設置した
メインコンピューターに並列接続して運用する形態が採用された。
この運用方針の結果、2002年4月1日の合併当日から
メインコンピューターの不具合が原因による大規模なシステム
障害が発生し、同月中旬まで預金者に混乱を来すこととなった。
ATMの稼動トラブルがとデータ未処理トラブルが続発したのだ。
ATMの稼働トラブルに関しては4月上旬に解消されたが、口座
振替に関してはシステムが増強される5月まで、システムセンタ
ーの人海戦術によるバッチデータの手作業での確認や準備が引き
落とし日に備えて日夜行われる状況が続いた。収納企業・公共団体
に対しては通常より早期に口振データの送付を要請した。また、
システムの改修に関わっていた富士通ターミナルシステムズの
システムエンジニア社員が激務により過労自殺する事態となり、
2003年に労災認定されたという事件まで発生した。


福島第一原発につづく、「人的エラー」での災害発生である。
上場大手企業は、形式的なコンプラインアスで、事足れりとする
のではなく、役員以下、実態的に業務を見直し、責任の自覚、
真剣が業務遂行に当たるべきと指摘したい。