伊藤忠商事グループの情報通信事業の戦略的子会社ナノ・メデ
ィアが、ウェルネット(2428)により、株式公開買付
(TOB)されることが発表された。買い付け価格は2万
6000円で、買い付け予定数(3万9000株)に買い付け
価格を乗じて算出した買い付け代金総額は、は10億1400
万円の予定。

モバイルコンピューティング事業の基盤強化と業容拡大を目指
したもので、買い付け期間は6月8日から7月11日。
ナノ・メディアはこのTOBに賛同している。筆頭株主の伊藤
忠商事は、公開買付応募契約に基づき、所有する普通株式2万
8714株を応募することで合意しているとのことである。

公開買い付け代理人はみずほインベスターズ証券。ナノ・メディア
のファイナンシャル・アドバイザーはバニラックスLLCとなって
いる。


一見普通のTOBだが、小首をかしげたくなるのは、下記3点である。

まず、フィナンシャル・アドバイザーのバニラックスLLCが
株価算定をしており、26000円というTOB価格を算出した
が、TOBやMBOの場合、第三者算定機関を使うのが通例である。
ナノ・メディアのFAでは、中立性に問題が生じている。

26000円は、前日6日の終値23070円に12.78%
のプレミアムをつけているということであるが、過去1ヵ月平均
の株価25392円の2.39%、3ヵ月平均の株価24653円
の5.46%のプレミアムである。6ヵ月平均は、30898円
であるので、ディスカウントである。これは、同規模のTOB案件
であった、夢真ホールディングスによるフルキャストテクノロジー
案件(TOB価格35320円、プレミアムは、1ヵ月で37.10%、
3ヶ月で、26,77%、6ヵ月で22.40%)、ビジネストラ
ストMBO案件(TOB価格35000円、プレミアムは、1ヵ月
で47.14%、3ヶ月で、46,70%、6ヵ月で44.33%)
に比べ、プレミアムが小さすぎる。しかも6ヵ月では、15.85
%のディスカウントである。

そして、1株当り純資産48239円、1株当り現金40030円
に対して、TOB価格26000円が低すぎることである。フルキ
ャストT案件では、1株純資産26079円、1株現金23615円
に対してTOB価格は、35320円であり、ビジネストラスト案件
でも、1株純資産32450円、1株現金30477円でに対して
TOB価格は、35000円である。

ナノ・メディア経営陣および伊藤忠商事は、株主総会前に大安売りで、
ウェルネットに叩き売ったということであるが、唐突かつ不合理であ
る印象は否めない。情報筋によると、ナノ社については、前社長時代
に、不透明な子会社取引を行った疑惑ある。当時の取締役および関係
者は、これを闇に葬り去りたかったのであろうか。今後、監視を続け
たい。